広島県内にふたつの店舗を構える補聴器センターアイは、老若男女のさまざまな「聞こえの悩み」に寄り添う認定補聴器専門店です。
DXというと業務のデジタル化を追求し、ムダをなくして作業効率を上げたり、生産性を高めたりといったイメージがあると思いますが、事業の特色によっては、すべての業務をデジタル化することが正解とは限らないケースもあります。
補聴器センターアイの事例においても、アナログで残すべきところを見極めながらのDX推進となりました。
今回は同社取締役であり、認定補聴器技能者として現場でも活躍されている福岡真吾さんに、導入時に心がけたポイントと導入後の成果、DXを活用して実現したい今後の展望についてお話しいただきました。
【会社情報】 設立:1991年11月 資本金: 従業員数: 本社:広島県広島市中区大手町3-1-8(広島本店) |
導入前の課題
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顧客管理システムの老朽化
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顧客管理と予約管理のシステム未連携による業務負担
導入前の成果
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案件情報の進捗が1ツールの中で追えるようになり、請求漏れ、確認漏れがなくなった。
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過去の取引履歴をデータ化し、属人化を解消
導入したツール
- kintone
サポートの手順
業務整理を目的としたヒアリング→ツールの提案→kintoneでの予約管理システム・顧客管理システム開発→マニュアル作成→定着サポート
さらなる業務改善を目指して「第二次DX」を決意
ーワクフリにご依頼いただく前から、福岡さんが主体となって業務のDXを進めていたとうかがっています。具体的にはどのような取り組みをされてきたのでしょうか?
DXとまではいかないかもしれませんが、20数年前の入社当時からデジタル化は推進してきました。一番最初に着手したのは、見積書です。
補聴器業界の特殊な事情で、見積書は行政などにも提出する必要があります。お客様1名に対して各6枚必要なのですが、それまでは紙に手書きして、さらに手書きで複写していました。これをエクセルで作成できるようにしたのが、弊社における最初のデジタル化でした。
次に着手したのは、予約システムです。当時は予約台帳に手書きで記入して、変更があれば消しゴムで消して書き直す状態だったので、そちらもエクセルでデータ化して管理できるようにしました。
エクセルに関しては簡単な関数などの基礎的な知識しかなかったので、ネットで検索しながらなんとか実現した形ですね。
ー補聴器センターアイにおける、第一次DXを実現されたのですね。当時、代表取締役であるお父様やスタッフのみなさんからの反対意見はありましたか?
当時はまだスタッフの人数が少なかったのですが、説得は大変でしたね。タブレットやスマホもない時代だったので、どこにでも持ち運べる紙で管理したほうが便利という意見もありました。
「火事になったら燃えてしまう、劣化して読めなくなる」などいろいろな理由で説得しましたが、一番効果があったのは、業務のなかで実感してもらうことでした。
わかりやすいメリットをスタッフが実感できなければ、いくら口頭で説明しても理解は得にくいですし、社内にシステムが定着しません。
作業効率が上がっていく現場を見て父も認めてくれたので、その後さらにエクセル管理を推進して、予約管理システムや顧客管理システムの導入もおこないました。
ー今回は、さらなるデジタル化によるDX実現を目指してワクフリにご依頼いただいたということでしょうか?
はい、エクセルをベースにした業務体制に限界を感じて依頼しました。
導入した予約管理システムや顧客管理システムが連携していなかったので、手入力の転記作業などが生じてしまい、業務における無駄が多いと感じていたんです。
いろいろ調べていくうちに、課題を解決するにはkintoneが良さそうだと考えて、kintoneの導入やサポート実績のあるワクフリさんに相談しました。
メリットを実感させるDXで、社内理解を促進
ーワクフリのサポートで第二次DXが始まった際にも、社内からの反対や不満の声はありましたか?
使いづらい・わかりづらいといった意見はありましたね。予約や顧客のデータ管理という基幹システムを変更することになるので、はじめは不満のほうが大きいのは当然だと思います。
社内の理解を得るために、これまでのデジタル化で培った経験を活かして、スタッフがメリットを実感しやすい業務のDXを優先しました。
ー具体的には、どのような業務を優先したのでしょうか?
主に受付スタッフが担当する予約・来店関連の業務です。
まずはkintoneで開発した予約管理システムと、日々手入力で記録していた来店記録のデータを連動させました。それによってボタンひとつで転記したり、アクションボタンを利用して入力が完了したりと、大幅に作業量が削減しました。
社内にシステムを定着させるには、実際に業務にあたるスタッフたちの理解と協力が不可欠です。どれだけ素晴らしいシステムを開発しても、使ってもらえなければ意味がありません。
弊社のお客様でも、購入した補聴器を使わない方がいらっしゃいます。ご家族が良かれと思って購入しても、ご本人がメリットを感じなければ、どんなに便利でも使っていただけないんです。
現場のスタッフが自発的に使いたいと思う、メリットを感じられるシステムの導入を優先したことで、社内の理解をスムーズに得られたと感じています。
それまでは業務について良くも悪くも不満を言わなかったスタッフが、メリットを感じたことで業務効率化の重要性を実感し、業務改善を「自分ごと」として捉えて意見を出してくれるようになったのも嬉しい変化です。
お客様を置き去りにしない!アナログとデジタルの融合DX
ーDXを推進するうえで、他にも気をつけた点や工夫したポイントがありましたら教えていただけますか?
「なんでもかんでもデジタルにしない」というのは、意識して進めました。
たとえば問診票はGoogleフォームなどを利用して、来店前に記入をお願いする方法も考えましたが、弊社のお客様はご高齢の方が多いので、タブレットやスマホからの入力が難しい場合があります。
無理にデジタル化しようとすると操作説明の業務が発生しますし、説明のためにお客様のスマホに触れた場合、予期せぬトラブルを引き起こす恐れもあるため、現在も紙の問診票を使っています。
来店時にお渡しする、次回の予約票も紙のままです。メールやLINEを利用できると業務効率は上がりますが、お客様に無理をさせない、わかりやすい仕組みを優先しました。
「アナログで残すべきところは残しつつ業務改善したい」という気持ちを尊重したうえで、ツールの提案やシステム開発をしていただけたので、ワクフリさんに依頼してよかったと感じています。
ーありがとうございます! 今回のDXにおいて、アナログとデジタルを融合させた業務例を具体的に教えていただけますか?
アポなしで来店されるお客様や電話で予約されるお客様もいらっしゃるので、予約管理システムも完全にデジタルではなく、データを手入力するケースもあります。
あとは、書類の郵送に関する業務ですね。見積書など封書で送る書類が多く、行政など毎回送る場所であればテンプレート作成もできますが、お客様すべてのテンプレートは作成できないので、これまでは都度打ち込んで印刷していました。
今はkintoneで管理している顧客のマスターデータから、アクションボタンで転記・出力が可能になりました。見積書を作成して、封筒に入れて送付するまでクリックだけで作業が進みますし、所要時間は以前の3分の1以下になっています。
すべてをデジタル化しなくても業務効率は十分に上がりましたし、残業がゼロになったスタッフもいるくらいです。
私自身も浮いた時間を活用して、お客様により満足していただけるための環境づくりや社員教育などに注力していきたいと考えています。
DX活用で事業成長と社会貢献を実現していく
ー今後、DXを活用して成し遂げたいこと、展望について教えていただけますか?
今後も、スタッフが気持ちよく働ける仕事環境をDXを活用して実現していきたいです。
スタッフの心に余裕があれば良い接客ができますし、お客様との信頼関係の構築ができます。その結果、お客様からのご紹介や口コミから、お客様が増えていく可能性もあるでしょう。
目の前にいる一人ひとりのお客様にご満足いただくことが、結果的に事業の成長に繋がっていくと考えています。
今後の展望としては、事業の成長だけでなく、業界の発展にも寄与していきたいですね。一昨年に創業30年を迎え、それを機に子どもの難聴などについて周知する社会貢献活動を始めました。
ー素晴らしい活動をされているのですね! 具体的には、どのような活動をされているのでしょうか?
テニスの経験があるので、聴覚障害者のテニス団体と共同でテニス教室の運営や、テニスイベントを開催しています。
子ども向けのイベントでは、VRゴーグルを使った難聴の方の生活体験、耳栓をつけてのテニス体験、難聴についてのミニ講義などを提供しています。
子どものうちから難聴について理解を深めて、偏見のない知識を身につけてもらえたら嬉しいです。
ー若い方はとくに、少し聞こえづらい程度では補聴器を使わず我慢してしまう方もいると聞いたことがあります。偏見がなくなれば、もっと快適に生活できる方が増えそうですね。
補聴器も日々進化しているので、スマホとペアリングして動画や音楽などを聞ける、イヤホンと同じように使えるものも増えました。文字起こしのアプリと連動できたりと、より便利に使いやすくなっています。
補聴器を利用するハードルを下げるために、こういった商品の情報も周知していきたいです。
ー補聴器が進化し、世の中のデジタル化に適応していくなかで、今後どのようにDXを進めていこうと考えていらっしゃいますか?
現場の様子を見ながらにはなりますが、DXの推進は今後も継続します。
今は60代くらいの方もスマホを活用していますので、今後はそういった方たちが弊社のお客様になっていくでしょう。
時代によっても変化するお客様の「聞こえの悩み」に寄り添ったサポートを提供するために、これからもDXを活用して事業を展開していきます。
ワクフリからひとこと
福岡さんはとても勉強熱心で、ご依頼いただいた段階でkintoneについての知識もお持ちでした。自社が抱える課題についても把握されていたので、リクエストが具体的で的確だった点も印象的です。
福岡さんからはいつも「僕たちの会社を、僕たちで良くしていくんだ」という強い気持ちを感じていました。やりたいこと・やるべきことの判断をしっかりしていただけるので、やり取りが非常にスムーズで、エンジニアともよく「有難い、素晴らしい」と話していました。
自社の事業展開だけでなく、業界の発展や認知に広く取り組まれている補聴器センターアイさまのサポートができたことを光栄に思っています。
業務の整理やITツールの選定、導入サポートにおいてお悩みがありましたら、ぜひワクフリにご相談ください。
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