column コラム

2024.12.20

DXフレームワークとは？デジタル変革を成功させるステップと活用法

デジタル技術の進展に伴い、多くの企業がDXに取り組む必要に迫られています。しかし、DXは単なる新しい技術の導入にとどまらず、企業全体の業務プロセスやビジネスモデルを根本から見直し、より効率的で柔軟な組織へと変革する取り組みです。

そのため、DXの成功には戦略的かつ計画的なアプローチが欠かせません。そこで注目されるのが「DXフレームワーク」です。DXフレームワークは、企業がDXを進める際に参考にすべきガイドラインであり、導入プロセスを段階的に整理することで、実効性の高い変革を実現するための道筋を示します。本記事では、このDXフレームワークの基本構造や具体的なステップについて解説し、企業がどのようにデジタル変革を進めるべきかを示します。

DXフレームワークとは

定義と概要

DXフレームワークとは、企業がDXを実現するための体系的なアプローチを提供する概念的な枠組みのことです。経済産業省が提唱する「DXレポート2」でも重要性が示されており、DX推進における共通の課題や取り組みの方向性が整理されています。

このフレームワークは、様々なDX成功事例を分析し、共通のパターンや要素を抽出して形式化したものです。技術導入、組織変革、ビジネスモデルの再構築など、DXに関わる多様な側面を包括的に捉え、企業が自社のDX戦略を立案・実施する際の指針となります。

具体的には、評価基準、実施手順、ベストプラクティスなどを含み、企業が現状を把握し、目標に向かって段階的に進むことを支援するものです。ただし、企業ごとに課題や状況が異なるため、誰もがそのまま活用できる汎用的なフレームワークではありません。

DXフレームワークの目的

DXフレームワークの主要な目的は、企業のデジタルトランスフォーメーションプロセスを体系化し、効率的に推進することです。具体的には、以下のような目的があります。

情報整理と可視化：DXに関わる情報や課題を整理し、全体像を明確にする。

戦略立案支援：企業のDX戦略立案や行動計画を体系化する。

進捗管理とリスク管理：DXの進捗状況やリスクを可視化し、管理する。

コミュニケーション促進：組織内外のステークホルダーとの共通言語として活用。

DX戦略の重要性と立案

DXを成功に導くためには、最初に明確な戦略を立てることが重要です。政府もDXを効果的に推進するためには、経営層、事業部門、そしてIT部門が対話を通じて共通の視点を持つことの重要性を強調しています。この戦略を立案する際に、次の二つの視点が不可欠です。

出典：デジタルトランスフォーメーションの加速に向けた研究会「DXレポート2（中間まとめ）」より

1．ビジョンや事業目的の達成をデジタルで解決する視点

企業が直面する課題や目標を、デジタル技術によってどのように解決できるのかを考えます。例えば、顧客体験を向上させるためにAIやデータ分析を活用するなど、デジタルを手段としてビジョンを実現する戦略です。

2．デジタル技術を活用して新たなビジネスモデルを模索する視点

既存のビジネスモデルにとどまらず、デジタル技術を使って新たな価値を創出することが求められます。たとえば、サブスクリプションモデルやデジタルサービスの提供など、デジタル技術を活用してビジネスの形を変革します。

経営とITが一体となって行動することで、企業は経営課題の解決や新たな事業モデル創出が可能となります。この一貫した戦略がDXの成功を左右します。

DXフレームワークの構造

DXを推進するためのフレームワークは、大きく3つの段階に分けられます。それぞれの段階で具体的な取り組みを進めることが、デジタル変革の効果を最大化するために重要です。

出典：デジタルトランスフォーメーションの加速に向けた研究会「DXレポート2（中間まとめ）」より

1. デジタイゼーション（デジタルデータ化）

まず、デジタルデータを活用できる環境を整えることが必要です。紙の資料を電子化し、情報をデジタルデータとして保存・管理するプロセスがこの段階に該当します。企業のデータをデジタル化することで、業務の効率化と正確性が向上します。

2. デジタライゼーション（業務プロセスのデジタル化）

次に、業務プロセスそのものをデジタル技術で最適化する段階に進みます。デジタル化したデータを活用し、手作業やアナログな業務をソフトウェアによって自動化することで、さらなる効率化を図ります。たとえば、製造業では製造プロセスのソフトウェア化がこの段階に含まれます。

3. デジタルトランスフォーメーション（全社的なデジタル変革）

最終段階は、企業全体のビジネスモデルや運営をデジタル技術によって抜本的に変革することです。ここでは、新たな製品やサービスの提供、ビジネスプロセスの見直し、組織の再構築などを行い、企業の競争力を強化します。製造業の例では、製造プロセスの遠隔化や職人のノウハウのデータ化がDXゴールとなります。

DXの3段階について詳しく知りたい人は以下のページをご覧ください。

DX推進の3段階フェーズとは？｜各段階の特徴を徹底紹介

DXフレームワークの5つの領域

出典：デジタルトランスフォーメーションの加速に向けた研究会「DXレポート2（中間まとめ）」より

DXフレームワークは、企業の取り組みを5つの領域に分けて整理することも可能です。これらの領域での取り組みを可視化することで、どこに強化が必要かを明確にし、戦略的なアクションを取ることができます。

1．ビジネスモデル

企業のビジネスモデル自体を見直し、新しい価値を創出します。

2．製品・サービス

デジタル技術を活用して、製品やサービスをより魅力的にすることが求められます。

3．業務プロセス

業務の流れをデジタル化し、効率化と自動化を進めます。

4．プラットフォーム

データやアプリケーションを統合するためのプラットフォームを構築します。

5．体制の整備

組織や人材の体制を整え、デジタル技術を最大限に活用できるようにします。

DXフレームワークは、企業が自社のDXの進捗状況を各領域ごとに可視化し、改善が必要な部分や強化すべきポイントを整理するのに役立ちます。さらに、この整理をもとに各領域の現状を俯瞰し、DX化がゴールになるように設定したうえで、そのゴールに向けて逆算して具体的なアクションプランを策定する際にも有効です。

出典：TANABE CONSULTING「DXフレームワーク活用法」より

DX成功パターンの重要性

具体的な取り組みを進める際には、過去の成功事例に学ぶことが有効です。DXの成功パターンを活用することで、効果的なアクションを計画しやすくなります。たとえば、製造業では次のような成功パターンがあります。

出典：デジタルトランスフォーメーションの加速に向けた研究会「DXレポート2（中間まとめ）」より

デジタイゼーション：製造装置の電子化
デジタライゼーション：製造プロセスのソフトウェア化
デジタルトランスフォーメーション：製造の遠隔化や職人のノウハウのデータ化

このように、業界ごとに異なる成功パターンを参考にしながら、DXの取り組みを段階的に進めることが重要です。

DXフレームワークの実装ステップ

DXフレームワークの実装は、準備段階、導入プロセス、そして継続的改善の3つのステップを踏みます。以下では、それぞれのステップを解説します。

準備段階

DXフレームワーク実装前の準備段階では、組織の現状分析を行い、デジタル化の度合いや課題を明確にします。次に、DXによって達成したい具体的な目標を設定します。

業務プロセスの効率性調査
データ活用状況の分析
顧客満足度向上策の検討
業務効率化の方向性決定

また、DXは組織全体に影響を与える取り組みであり、トップダウンの推進力が必要であることから、経営層の理解と支援を得ることも不可欠です。同時に、プロジェクトを推進するチームの編成や、必要なリソースの確保も行います。

導入プロセス

DXフレームワークの導入プロセスは、準備段階で設定した目標を実現するための具体的な行動計画を立て、実行に移す段階です。まず、以下のように、詳細な実行計画を策定します。

タイムライン
必要なリソース
予算
期待される成果

次に、計画に基づいて実際の導入作業を開始します。小規模なパイロットプロジェクトから始め、徐々に規模を拡大していくことで、リスクを最小限に抑えつつ、学習と調整の機会を得るためです。

また、KPI（重要業績評価指標）を設定し、定期的に進捗を評価します。計画からの逸脱や予期せぬ問題を早期に発見し、迅速に対応できる基盤を整えてください。

継続的改善

DXフレームワークの導入後、デジタル技術や市場環境は常に変化しており、一度導入したフレームワークも時間とともに陳腐化するため、導入したシステムやプロセスの効果を定期的に測定・分析します。

例えば、以下の指標を用いて、DXの成果を定量的に評価します。

顧客満足度
業務効率
収益性

また、従業員や顧客からのフィードバックを積極的に収集し、質的な評価も行います。この評価結果に基づいて、必要な改善策を立案し実行します。新たな技術の導入、プロセスの最適化、あるいは組織構造の見直しなど、状況に応じて柔軟に対応することが大切です。

まとめ

DXを成功させるためには、経営とITが一体となり、共通のビジョンを持って推進することが重要です。その際に、DXフレームワークやDX成功パターンを活用することで、段階的かつ具体的なアクションプランを策定することができます。また、企業の成熟度やビジネス目標に応じてDXのアプローチを調整することが成功の鍵です。

ただし、フレームワークはあくまでも指針であり、自社に即した内容で進めるには豊富な経験と専門知識が必要です。さらに、KPIの設定やプロセスの測定、分析には慎重な対応が求められます。ワクフリは、900社以上のDX支援実績を持つコンサルティング企業として、企業様の業務内容や組織状態、ITリテラシーの高低にかかわらず、業務改革やDX実現に向けた支援を行います。