DX推進指標とは|活用メリットや自己診断についてご紹介!
目次
DX推進は中長期的な取り組みになることから、効果判断が非常に難しく、実際に約4割の企業が「DXの効果を感じていない」と評価しているデータがあります。
参照:一般社団法人日本能率協会「日本企業の経営課題 2021」
こうした課題に直面している企業に対し、適切な中間指標と戦略を打ち出す基盤となるのが「DX推進指標」です。
本記事では、DX推進指標の定義や、活用メリットについてわかりやすく解説します。
DXに課題を感じている企業様はぜひ、参考にしてみてください。
DX推進指標とは
DX推進指標とは、企業がデジタルトランスフォーメーション(DX)を効果的に進めるために、自社の現状や課題を把握し、改善策を講じるための指標のことです。
IPAでは、以下のように定義されています。
DX推進指標は、経営者や社内の関係者がデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進に向けた現状や課題に対する認識を共有し、アクションにつなげるための気付きの機会を提供するものです。
出典:IPA「DX推進指標のご案内」より
一方で、経済産業省での定義は、以下のとおりです。
本指標は、現在、多くの日本企業が直面しているDXを巡る課題を指標項目とし、
- 上記関係者が議論をしながら自社の現状や課題、とるべきアクションについての認識を共有し、関係者がベクトルを合わせてアクションにつなげていくことを後押しすべく、
- 気づきの機会を提供するためのツールとして、策定したものである。
出典:経済産業省「DX推進指標サマリー」より
DX推進指標の特徴は、経営幹部や事業部門、DX部門、IT部門などが一堂に会し、それぞれの視点からの現状把握や課題認識を深める点にあります。
DX推進指標は、単に現状を把握するためだけではなく、新たな気づきを生み出し、それをアクションに繋げるために策定されています。
すなわち、自社がDXをどのように進めていけばよいのか、具体的な方向性を見出すための羅針盤となるものです。
DX推進指標の役割とメリット
DX推進指標の役割は、以下の3つです。
- 経営や組織におけるDX推進の課題を明確にすること
- DXの実現に向けた経営方針と現状の差異を把握すること
- 企業がDXに着手する契機を提供すること
DX推進指標には、企業がDXの実現に向けて取り組むべき内容や、DXの各プロセスの成否を判断する基準が詳細に記載されています。
さらに、DX推進指標の利用には以下のメリットが期待されます。
- 競争力を高めることができる
- 効果的な戦略立案が可能になる
- 組織全体の力が向上し、変革が促進される
これらのメリットは、自社の業界内での位置づけや次のステップの把握、課題の共有ができることによって実現されます。
DXの成功には、新たな価値の創造とビジネス構造の変革が不可欠です。
ただし、半端なデジタイゼーションやデジタライゼーションに満足するのではなく、組織全体に変化を浸透させるためには、持続的な姿勢と仕組みが必要です。
DX推進指標の内容
DX推進指標の構成は、大きく以下の2つのカテゴリーに分けられます。
- DX推進のための経営のあり方、仕組みに関する指標
- DXを実現する上で基盤となるITシステムの構築に関する指標
DX推進のための経営のあり方、仕組みに関する指標は、企業がDXを成功させるための基本的な考え方やアプローチを示すものです。
主に、経営者が自ら回答するキークエスチョンと、経営幹部や事業部門と議論しながら回答するサブクエスチョンで構成されています。
出典:独立行政法人情報処理推進機構 「「DX推進指標」とそのガイダンス」より
具体的には、経営トップのコミットメント、マインドセット、企業文化、体制、KPI、評価、投資意思決定、予算分配などが挙げられます。
次に、DXを実現する上で基盤となるITシステムの構築に関する指標は、ITシステムがビジネスのビジョンを支え、迅速かつ柔軟に対応するための基本的な枠組みです。
例えば、ビジョン実現の基盤としてのITシステムの構築、ITシステムに求められる要素(データ活動、スピード・アジリティ、全体最適など)、IT資産の分析・評価、IT資産の仕分けと計画、ガバナンス・体制などです。
この2つのDX推進指標の活用によって、企業内の認識の共有、次のアクションへの議論、進捗管理をすることができます。
DX推進指標における熟成度
DX推進指標の自己診断では、定性指標の各項目を以下の6段階の成熟度で評価します。
レベル | 状態 |
レベル0「未着手」 | 経営者はDXに無関心か、関心があっても具体的な取り組みに至っていない |
レベル1「一部での散発的実施」 | 部門単位での試行・実施 |
レベル2「一部での戦略的実施」 | 全社戦略に基づく一部の部門での推進 |
レベル3「全社戦略に基づく部門横断的推進」 | 全社的な取り組みとなり、部門横断的に実践 |
レベル4「全社戦略に基づく持続的実施」 | 定量的な指標による持続的な実施、組織ややり方の改善が継続的 |
レベル5「グローバル市場におけるデジタル企業」 | グローバル競争を勝ち抜くデジタル企業 |
出典:独立行政法人情報処理推進機構 「「DX推進指標」とそのガイダンス」をもとに作成
DX推進においては、各定性指標の成熟度を正確に把握する必要があります。
次の具体的なアクションに取り組むためには、客観的で誠実な判断を下しましょう。
DX推進指標の活用方法
DX推進指標を用いた自己診断の手順やポイントについて紹介します。
自己診断を行うことで、自社が解決すべき課題や具体的な施策が自然と見えてきます。
DX推進指標の自己診断手順は以下の通りです。
- DX推進指標とDX推進ガイドラインの把握
- 自己診断の実行
- 自己診断フォーマットの記入
- 自己診断結果のサイトの入力
- ベンチマークの入手
- 結果をもとにDX推進について議論
1.DX推進指標とデジタルガバナンス・コードの把握
DX推進指標を効果的に活用するためには、経済産業省やIPA(情報処理推進機構)の公式ウェブサイトから、「DX推進指標とそのガイダンス」を確認し、内容を理解することが重要です。
そして、「デジタルガバナンス・コード」には、経営のあり方や投資の意思決定など、DXを成功させるための11項目が示されています。
DX推進派と現状維持派で組織風土が乱れないよう、具体的なDXの方針を決めるなど慎重な準備が必要です。
2.自己診断の実行
「DXの推進指標とそのガイダンス」を基にして、社内で9つのキークエスチョンと26のサブクエスチョンについて議論を行い、それぞれの答えを見つけ出しましょう。
以下は実際の自己診断のキークエスチョンです。
出典:IPA「DX推進指標のご案内」の自己診断方法より
DX推進指標では、成熟度を評価するための基準が後半に示されています。
もし成熟度を決定するための根拠や証拠が不十分な場合は、その判定基準も参考にすることができます。
3.自己診断フォーマットの記入
まず、情報処理推進機構(IPA)が提供する「DX推進指標自己診断フォーマット(Excelファイル)」をダウンロードします。
このフォーマットは、企業が自身のDX推進状況を客観的に評価するために作られています。
経営幹部や事業部門、DX部門、IT部門などの関係者を集めて、議論しながら現状とその根拠、目標と達成のために必要なアクション等を検討し、フォーマットに記入しましょう。
4.自己診断結果のサイトの入力
記入が完了したら、Web申請システム「DX推進ポータル」にアクセスし、記入した「DX推進指標自己診断フォーマット」を提出します。
提出にあたっては、Web申請システムを利用するためにgBizIDの取得が必要です。
取得後はgBizIDでログインし、DX推進指標のセクションにある「DX推進指標の手続き」から進めます。
オプションから「診断結果を提出する」ボタンを選んで、指示に従って自己診断結果をアップロードしましょう。
5.ベンチマークの入手
アップロードが完了すると、提出された診断結果が集約され、業界や企業規模ごとに分析を行ったベンチマークレポートを受け取れます。
ベンチマークでは診断誤差を排除するため、中立的な組織が提出した根拠を確認し、必要に応じて企業に対して確認を行う仕組みが用意されています。
受け取ったレポートは、自社のDX取り組みが他社に比べてどのような位置にあるのか、客観的に理解を深めるために活用しましょう。
例えば、自社がスピード経営や新規ビジネスへのIT投資、経営幹部の関与などの面で他社に比べて劣後しているといった具体的な課題が明らかになることもあります。
なお、IPAによる分析結果のレポートはプライバシーを保護した状態で、2019年版から公開されています。
6.結果をもとにDX推進について議論
ベンチマークレポートや自己診断結果を基に、DXの方針や具体的な施策をまとめましょう。
方針が確定したら、経営陣はDXプロジェクトの環境整備やリソースの適切な配分を進めましょう。
それと並行して、各部門のDX担当者は施策の迅速な実行に取り組むことを推奨します。
DX推進指標の効果的に使うヒント
DX推進指標を効果的に使うために以下のような活用ポイントを紹介します。
- DX推進指標を用いた業務設計
- 自社に合わせたDX推進指標のカスタマイズ
1.DX推進指標を用いた業務設計
DX推進指標を活用して業務設計を行うことで、効率よくDX推進を行えます。
方法としては、まず現状の業務プロセスを評価することから始めましょう。
従来のやり方を見直し、効率や効果を向上させるために、DX推進指標を取り入れます。
業務プロセスの評価では、DX推進指標を用いて業務の各段階を分析し、問題点や改善の余地を見つけ出します。
例えば、自動化やデジタル化の導入によって業務手順を合理化することが挙げられます。
このアプローチにより、企業は迅速で効果的な業務プロセスを確立することができ、結果として競争力が向上します。
2.自社に合わせたDX推進指標のカスタマイズ
DX推進指標にある定性指標は、全ての成熟度でレベル5を目指す必要はありません 。
DXで成長させたい事業や自社の中心事業など、企業の状況に合わせて最適な目標数値を設定しましょう。
これらは経済産業省の「DX推進指標とそのガイダンス」の中でも述べられています。
定性指標の優先順位付けや、社内リソースに応じた成熟度レベルの調整など、自社の方針に適した指標にカスタマイズしましょう。
まとめ
DX推進指標は、企業が自身のDX推進状況を客観的に評価するための基準です。
定性指標と定量指標の2つからなるこの指標を理解し、適切に活用することがDXを成功に導くためにも重要です。
しかし、DX推進指標を理解できても、実際の現場や業務フローにおいて、定期的にチェックし、組織全体でPDCAを回すのは現実的なリソースを踏まえると、困難な企業も多いかと思います。
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