column コラム
  1. ホーム
  2. コラム
  3. DX推進
  4. なぜ中小企業ではDXが進まない?|課題と...

なぜ中小企業ではDXが進まない?|課題と進め方について解説

目次

「DXが重要だと聞くけど、うちの会社では全然進まない…」このような悩みを抱えている中小企業の担当者の方は少なくありません。実際に人材不足や認識の甘さから、多くの中小企業でDX推進が思うように進んでいないのが現状です。

本記事では、中小企業のDX推進が進まない理由を深掘りし、その必要性や具体的な進め方、成功のポイントまでを詳しく解説します。実際にDXで成功を収めた中小企業の事例も紹介するため、ぜひ最後までご一読ください。

中小企業の推進状況

推進状況は、残念ながら大企業に比べて大きく遅れをとっているのが現状です。総務省中小企業におけるDXの調査によると、中小企業の約7割がDXを「実施していない、今後も予定なし」と回答しており、大企業の約4割と比較すると、その差は歴然です。

業種別に見ると、情報通信業がもっとも進んでおり、約45%の企業が既にDXを実施していると回答しています。特に、医療・福祉、運輸業、宿泊業、飲食サービス業などの分野では、DXの取り組みが10%台と低調な状況です。

業種/詳細業種DX実施率
情報通信業約45%
製造業約25%
エネルギー・インフラ約25%
商業・流通業約25%
サービス業等約16%
金融業、保険業約45%
医療・福祉約9%
運輸業、郵便業約17%
宿泊業、飲食サービス業約16%
生活関連サービス業、娯楽業約18%

「今後実施を検討」と回答した中小企業の割合が、地域を問わず15~20%程度にとどまり、DXの必要性を十分に認識できていない、あるいは取り組み方がわからないという課題を浮き彫りにしています。

中小企業のDX化が進まない理由

中小企業のDX化が進まない理由は、主に人材不足と認識不足の2点に集約されます。この課題は、中小企業の経営資源の制約や、急速に変化するデジタル技術への対応の難しさを反映したものです。

人材不足

中小企業基盤整備機構の調査によると、約28%の企業がITに関わる人材の不足を、27%の企業がDX推進に関わる人材の不足を課題として挙げています。

この人材不足は、中小企業が大企業と比べて給与や福利厚生面で不利な立場にあることから、優秀なデジタル人材を確保することが難しい状況を反映したものだと考えられます。また、人材育成には時間とコストがかかるため、日々の業務に追われる中小企業にとっては大きな負担となりかねません。

認識不足

同調査によると、DXを理解している(「理解している」「ある程度理解している」)企業は全体の49.1%にとどまり、半数以上の企業がDXの本質や重要性を十分に理解していない状況です。

さらに注目すべきは、DXの必要性について「必要だと思う」「ある程度必要だと思う」と回答した企業が71.9%に達していることです。DXの重要性は認識しているものの、特に経営者層においてビジネスモデルの変革や組織文化の改革を含む包括的な取り組みであることの理解不足により、推進が停滞してしまうのです。

中小企業のDX化の必要性

中小企業にとって、DXは単なるトレンドではなく、生き残りと成長のための必須戦略と考えてください。急速に変化するビジネス環境において、DXは競争力の維持・向上、顧客ニーズへの迅速な対応、そして業務効率化とコスト削減を見出すために、以下では中小企業がDXに取り組むべき具体的な理由を詳しく見ていきましょう。

競争力の維持と向上

DXは中小企業が大企業と互角に戦い、さらには業界の常識を覆すようなビジネスを展開するための武器となるものです。デジタル技術を上手に使うことで、中小企業は大企業に匹敵する効率性と革新性を獲得できるからです。

例えば、AIやビッグデータ分析を上手に使うことで、市場動向や顧客ニーズをリアルタイムで把握し、迅速な意思決定が可能になります。また、クラウドサービスの利用により、大規模なIT投資なしに高度なシステムを導入でき、業務効率を向上できます。

顧客ニーズの変化への対応

DXはデジタル技術を活用して顧客ニーズの変化に柔軟に対応することで、中小企業は顧客ロイヤリティを高め、持続的な成長も実現できます。

デジタル技術の進化に伴い、顧客の期待や行動パターンも急速に変化しています。例えば、スマホの普及により、顧客は24時間365日、どこからでも情報にアクセスし、商品やサービスを購入することを期待しています。

このようなニーズに応えるためには、使いやすいWebサイトやモバイルアプリの開発、オンライン決済システムの導入など、デジタル技術を活用したサービス提供などの工夫が求められるのです。

効率化とコスト削減

中小企業のDXの推進においては、デジタル技術を上手に使うことでこれまで人手に頼っていた作業を自動化し、人的ミスを減らすとともに、従業員がより付加価値の高い業務に集中できます。

例えば、従来の紙ベースの経理処理をクラウド会計システムに移行することで、請求書の発行や経費精算などの作業時間を削減できます。また、リアルタイムで財務状況を把握できることで、より迅速で正確な経営判断も可能です。

他にもRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)の活用により、データ入力や定型レポートの作成など、繰り返し行われる業務を自動化することで作業時間を削減できます。

中小企業のDX化の進め方

中小企業がDXを成功させるためには、単なるIT導入ではなく、ビジネスモデルや組織文化の変革を含む包括的な取り組みであることを念頭に置く必要があります。そこで以下では、中小企業がDXを効果的に進めるための4つのステップを詳しく解説します。

1.目的整理/目標設定

DXの第一歩は、DXを推進する目的を明確に整理し、具体的な目標を設定することです。企業は、以下のような目的を考慮する必要があります。

目的の例内容
売上増加デジタル技術を活用して、売上の拡大を目指す
顧客満足度の向上顧客体験を改善し、満足度を高める
新しい収益源の開拓新たなビジネスモデルを通じて、収益源を多様化する

目標が明確であればあるほど、DX推進の方向性が定まり、成功への道筋が見えてきます。

目標設定においては、SMARTのフレームワークを用いて、DXを通じて何を実現したいのか、明確なビジョンを描くことが重要です。

また、目標達成度を測定するために、以下に挙げた例のようなKPI(重要業績評価指標)の設定も行ってください。

指標カテゴリー主要KPI
顧客関連満足度、維持率、新規獲得数
業務効率処理時間短縮率、エラー率低減
財務関連売上高、利益率、コスト削減率
デジタル化オンライン取引比率、ツール活用率

2.業務整理/現状分析

次に、自社における現在の業務プロセスを詳細に評価し、改善点を洗い出します。

具体的には、以下のような手順で進めます。

  1. 業務プロセスの可視化
  2. データ収集と分析
  3. 従業員へのヒアリング
  4. 競合他社との比較
  5. 技術動向の調査

この過程で、非効率な業務プロセス、データ活用の不足、顧客ニーズとのミスマッチなど、様々な課題が浮き彫りになります。この課題を優先順位付けし、DXによって解決可能な項目を特定することが、次のステップへの準備となります。

3.企画立案

目的と現状分析を基に、DX施策を設計します。重要なのは、実現可能性、コスト、スケジュールを考慮した計画を立てることです。

施策例目的
PRAの導入業務の効率化
CRMシステムの導入顧客満足度の向上
オンライン対応の強化顧客満足度の向上

リソース(人材、予算、技術)を確保し、現実的なスケジュールを立てます。プロジェクト管理を活用し、タスクの優先順位と進捗を細かくチェックしましょう。外部の専門家とも連携し、不足する技術やノウハウを補完することが重要です。

また、リスクを見逃さず、技術的な課題や予算超過、従業員の反発といった問題を事前に洗い出し、対応策を用意します。さらに、施策の進行状況を常に確認し、必要に応じて柔軟に修正するフィードバックループを構築するようにしましょう。

企画立案が成功するかどうかは、現実的で実行可能な戦略と全社的な協力が鍵となります。

4.実施

戦略を立案したら、小規模なプロジェクトから始め、試行錯誤を重ねながら徐々に規模を拡大します。

ステップ詳細
1. パイロットプロジェクト選定小規模、短期成果の施策を選択
2. チーム編成多部署から人材集結、外部専門家も検討
3. 段階的実施計画を段階的に実行、成果測定
4. フィードバック収集・分析参加者・影響者から定期的に情報収集
5. 迅速な改善フィードバックに基づき即時改善
6. 成功事例共有小さな成功も組織内で共有、DX促進

このプロセスを通じて、組織はDXの実践的なノウハウを蓄積し、より大規模なプロジェクトに取り組む準備を整えることができます。また、小さな成功体験を積み重ねることで、従業員のDXへの抵抗感を減らし、前向きな姿勢を醸成できます。

5.本格展開と継続的な改善

パイロットプロジェクトで成功を収め、ノウハウを蓄積したら、次は全社規模での本格展開に移ります。この段階では、DXを企業文化として定着させ、継続的な改善サイクルを確立してください。

項目内容
全社的な展開計画パイロットプロジェクトを基に全社展開を計画
変更管理従業員への丁寧な説明と教育を実施
インフラ整備必要なITインフラやシステムを全社規模で整備
段階的展開部門ごとに展開し、各段階で成果を確認
PDCAサイクル確立計画→実行→評価→改善の継続的サイクル
KPI測定・分析定期的なKPI測定と目標達成度分析
ベストプラクティス共有成功事例や教訓を組織全体で共有
技術動向モニタリング最新技術やトレンドを常に追跡し導入検討
外部連携強化取引先や顧客とのデジタル連携を推進

中小企業のDXは一過性の取り組みではなく、企業の持続的な成長を支える基盤となります。継続的な改善サイクルを回すことで、市場環境の変化や新たな技術の登場にも柔軟に対応できる組織へと進化していくのです。

中小企業のDX推進のポイント

中小企業がDXを成功させるためには、人材の確保と育成、そして組織全体のデジタルリテラシー向上が必要です。以下で、ポイントについて詳しく解説します。

◇人材の確保と育成

中小企業のDX推進において、人材の確保と育成はもっとも重要な課題の1つです。

しかし、限られた予算の中で、即戦力となる人材を外部から採用することは容易ではありません。そこで、既存の従業員におけるDXリテラシー向上とスキルアップのための教育プログラムを整備することが効果的です。

  1. オンライン学習プラットフォームの活用
  2. 社内勉強会の定期開催
  3. OJT(On-the-Job Training)の実施
  4. 資格取得支援:
  5. 外部研修への参加

結果として、全社的なデジタルリテラシーの底上げにもつながり、DXへの理解と協力を得やすくなります。

組織全体のリテラシー向上

中小企業のDX推進において、単にITスキルを高めるだけでなく、デジタル文化を醸成し、各部門が連携してDXを推進する体制を構築することも大切です。

デジタル文化の醸成には、以下のような取り組みが効果的です。

  1. 経営者自身のデジタルリテラシー向上
  2. デジタルツールの日常的な活用
  3. 失敗を恐れない文化の醸成
  4. クロスファンクショナルな取り組み

各部門が連携してDXを推進すること、つまり部門間の壁を取り払い、情報共有と協力体制を構築してください。相乗効果を生み出し、組織全体としてのDX推進力を高めることができます。

成功事例

ここでは、ワクフリが支援した中小企業のDX成功事例を紹介します。これまでの事例に共通するのは、経営者の強いコミットメント、明確な目標設定、段階的なアプローチ、そして従業員の積極的な参加です。

以下では、特に印象的な2つの事例を詳しく見ていきましょう。

中野建設

まず、100年以上の歴史を持つ佐賀県の建設会社、中野建設のDX推進の事例です。同社の課題であった情報の属人化や部門間連携の弱さに対し、以下のアプローチでこの取り組みにより、業務の標準化、情報の一元管理、管理職の負担軽減などが実現しました。

  1. 経営層へのヒアリングによる目的整理
  2. ハウジング事業本部での業務フロー可視化と課題抽出
  3. 全社的な情報共有システムの開発と導入

この事例のポイントは、現場の声を丁寧に拾い上げながら、段階的にDXを推進したことです。中小企業にとって、このようなスモールステップを活用したDX推進は、円滑なかつ無理のない全社的な取り組みに効果的です。

SagaSmartNinja

佐賀県のDX人材育成事業「SAGA Smart Ninja」は、100名以上の参加者に対し、ノーコードツールやSaaSを活用した業務効率化スキルを指導した事例です。4ヶ月にわたる実践的なカリキュラムで、多くの受講者が自社の課題解決に取り組みました。

他にも、建設会社での部署間連携強化、学校法人での事務職員の意識改革、老舗貴金属メーカーでの現場改革など、多様な業種でDX支援を行っています。ワークショップやハンズオン形式の研修を通じ、社員の意識改革や具体的な業務改善を実現し、中小企業特有の課題に寄り添ったきめ細やかなサポートで推進に成功した好例です。

まとめ

中小企業のDX推進は、人材不足や認識不足といった課題はありますが、競争力維持と成長のための必須戦略です。

そして、成功させるためには段階的なアプローチと全社的な取り組みを基本とし、経営者のコミットメント、明確な目標設定、従業員のスキルアップ、そして組織全体のデジタルリテラシー向上が不可欠です。とはいえ、中小企業においては実施見込みのまま、実際に実行に移せず立ち往生してしまうケースも多いのが現状です。

この点、ワクフリでは必要な人材をアサインし、全社的なDXを伴走型で支援します。また、実践型DX研修を通じて社員のリテラシー向上を図り、研修後も自走できるよう支援するため、まずはお気軽にご相談ください。

お問い合わせ・ご相談
050-3786-4213

平日10:00~17:00

その他のコラム

一覧へ戻る
contact

お問い合わせ・ご相談