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佐賀県有数の建設会社が取り組む部所間を越えたDX

株式会社 中野建設

1918年2月に個人建設業を設立。1949年12月に株式会社中野組設立。1968年2月に株式会社中野建設へ商号変更。1969年4月にグループ会社の株式会社中野ハウジングを設立。2009年9月、株式会社中野ハウジングを吸収合併し「ハウジング事業部」発足設立(2021年5月より「ハウジング事業本部」へ組織名を変更)。2023年7月に佐賀県内の建設業で初めてDX認定を取得。2024年5月に「情報管理室」「ICT推進室」を「DX推進部」に統合し、組織名を変更。従業員数273名(2024年1月現在)。建築工事・土木工事・舗装工事・住宅工事・販売、合材販売を軸に、佐賀県下を中心として事業を展開する。

佐賀県での事業を中心に、100年を超す長きにわたり建設業を行ってきた中野建設。同社も、事業年数を重ねる中で、業務改善の必要性が出てきました。

そこで中野建設は3年前に情報管理室を発足し、DXの推進や会社全体のハードとソフトの管理、パソコン関係のトラブル対応などを主に行ってきました。

また、施工部門にはICT推進室を配置。ドローンなどを使って現場の測量を補助するなど、現場でDXの支援をする立場で動いてきました。それらを統合して、DX推進部が2024年5月に発足しました。

そのDX推進部には、名前のとおりDXを推進する役割がありました。しかし、どのように進めるべきか、社内での判断がつきかねる……そんな課題をもっていました。

江口

「佐賀県の『IT フェア』という展示会にワクフリが出展されていて、そこで初めてワクフリに出会って、業務改善コンサルに興味がありご相談をしました。

佐賀県のサポーティングカンパニーであり、建設業界へのコンサルにも実績があるとお聞きし、ワクフリにDXのコンサルを依頼することになりました」

業務が内部完結するハウジング事業本部から業務改善に取り組む

中野建設は、建築・土木の規模が大きく、複数の部所が存在し関わりあっています。そのため全社をまとめて業務改善するのは難しいと判断し、内部で業務が完結しているハウジング事業本部のヒアリングから業務改善を進めることとなりました。

江口

「ハウジング事業本部は営業・設計・施工・積算・事務という業務が1つの部所にまとまっている利点があり、ハウジング事業本部からスモールスタートし、これをロールモデルにしたいと考えました。
DXに取り組むにあたり、役員の考えるあるべき姿についてのヒアリングと、新規の顧客から引き渡しまでの情報共有や、データの蓄積を一元管理することを目標にハウジング事業本部のヒアリングを始めました。

社内の担当者だけでヒアリングをしても業務改善の実施が難しいですが、第三者を入れることで、普段聞けないことを導きだしていただき、細かなヒアリングができました。

実際、役員が現状をどう考えているのか、また、現状の課題とあるべき姿が可視化されて、今後への課題も見えてきました。

ヒアリングの中でまず見えてきたのは、情報が属人化されていて、営業担当でないとわからないことや、退職した場合の引き継ぎに困るような情報が非常に多いことでした。また、会社の大事な資産にかかわらず、情報がまとめて蓄積されておらず、個人がそれぞれ持っている状態でした。これをまずやめなければいけない。それが、全社的な課題として浮かび上がってきました」

ヒアリングの狙いは目的整理の実施であり、経営層に会社の課題を確認してもらうこと、そして、DXを”通じて”実現したい姿を定義することでした。

やがて、ワクフリのヒアリングが元となり、2つの視点での情報共有が必要なことがわかってきました。

それは、案件発生から終了に至るまでの部所内外の情報共有と若手の育成・引き継ぎを目的とした情報共有でした。

江口

「若手社員に関しては、上司の背中を見て覚えるような傾向がありました。業務がマニュアル化されておらず情報が共有されていない部分がありました。」

9か月間の業務変革をハウジング事業本部で開始

ヒアリングを行い、目的整理が実現したことで、次のステップとして9か月にわたるハウジング事業本部の業務整理が始まり、現状フローの可視化と領域ごとの課題整理を行うことになりました。

ハウジング事業本部には当時、基幹システムがなく、情報共有や情報の利活用ができていない状態でした。

松田

「DXの担当として営業セクションを代表して取り組む中で、今まで当たり前に行っていた業務を整理し、無駄な部分をなくしていきたいと考えていました。

ただし、『なんでDXに取り組んでいるのか?』といった意識も含め、同僚や部下などへ水平展開していきたかったのですが、なかなかうまく伝え切れておらず、『言われたからやっている』という雰囲気もありましたし、新しいことに取り組むことで逆に仕事量が増えた印象を与えてしまいました。もちろん、初めて取り組むことなので、なるべく足並みを揃えていきたかったのですが、意外と難しかったです」

西山

「私は設計セクションを代表して業務整理にあたりました。今まで、その場その場でやっていた業務を改めて洗い出しする中で、『みんなどのようにやっていたかな』と想像することが大変でした。営業や工事、事務といった部所間の調整も難しかったですね。

あと、業務があまりにも煩雑だということが、明確になりました。これをどうにか簡素化しないといけないな……という事実に気づけたことも、大きな収穫でした」

ハウジング事業本部では、プロジェクトの中で阿吽(あうん)の呼吸により業務を進めていたり、人によってやり方が異なったりと、明文化されていないことがあり、その問題が、業務整理の中で徐々に明確になっていきました。

西山

「今までの経験値を元にし、現場監督はこういう伝え方をするとか、営業担当はこんな活動をするといった具合に、現場を想像しながら動くことが多かったです。もしダイレクトに他部門と情報を共有できれば、もう少しやりやすいだろうという思いは以前からありました」

松田

「基本的には会って話せるのが一番ですが、佐賀県全域で工事を行っているので、会社から電話で状況を説明してもらいながら、現場で図面を確認するといったこともあります。もちろん、間違いがあってはならないのですが、電話では正確な情報伝達が難しい面はありました」

ハウジング事業本部での業務整理が進みその実態が明確になる一方で、改善を図ると別の担当者の作業が少し増える、そんな事態が起こるようになりました。それは、全体最適という視点ではいいのかもしれませんが、細かな調整が必要なことは明らかでした。

そして、営業・設計・施工・積算・事務とそれぞれの上長を結ぶ情報管理システムを開発し、実際に運用が始まりました。

松田

「情報の共有化という形で、今まで個々で行っていた案件管理が、誰でも見られるような状態になり、業務改善へプラスに働いていることが多いと実感しました。

ただし、同じような情報を二重に入力しなければいけないケースもあり、もっと使いこなせるようになれば、さらに大きな改善につながると感じています。

もちろん、部員全員で共通認識を持って取り組むことが大前提ですが、実現すれば、さらに時短につながると思っています。

そして、会社に帰ってからデータを入力することもできれば、社外からでも入力できるようになりました。小さなことですが、いろいろな場面で時短や工数の削減ができるようになりました」

西山

「以前に設計セクションだけで、図面や書類のペーパーレス化を試したことはありましたが、ハウジング事業本部全体を見て業務改善することは、今まであまり考えていませんでした。でも、全体的に考えた方がコミュニケーションも取りやすくなりますし、取り組んでみてよかったと感じます。

しかし、操作に慣れていない社員によっては二重登録などのムダがあるので、システムが本当にうまく稼働してるかというと、まだまだこれからだと思います。少しずつ改善しながら、部員の取り組みに温度差が出ないように行いたいです。」

そこで、全社運用の制約上変えられない部分を考慮しながら、行える部所内の情報共有策をワクフリで提示することとなりました。

そのため、ハウジング事業本部の業務整理と同様に全部所の業務整理を実施し、全社の情報・タスク共有策をワクフリが提示しました。

加えて、現場スタッフの配置予定組み・稼働実績管理。土木プラント(舗装材料)の受注・販売管理。資格管理にバックオフィスなどの業務効率化策も提示しました。

ワクフリの業務変革で得られた3つのベネフィット

今回の9か月にわたる業務変革の中で、中野建設が得られたベネフィット(恩恵)はどのようなものでしょうか?

1つ目のベネフィットは、業務変革や目的整理により、取り組むべき課題が明確になったことです。各部所内での業務改善に視点は向くものの、全体最適での視点では、社内の担当者だけで、業務改善の方向性を決定することは、かなりハードルが高かったかもしれません。

2つ目のベネフィットは、ハウジング事業本部のシステム開発が進み、実際に運用が行われたことです。

従来は、それぞれの担当者による情報伝達のやり方が異なるため、受け手側にスキルが求められていました。しかし、業務標準化の視点を持つシステム開発により、情報を残すルールが作られました。そして、今まで日報や会議資料、顧客提出資料などがバラバラに存在し、全ての転記が必要でしたが、業務標準化の視点を持つことで、その手間が削減されました。

また、退職や引き継ぎの土台として、情報蓄積基盤の視点がもてるようになりました。情報蓄積はこれからですが、中野建設にとって将来の情報財産になることが期待されます。

さらに、今までは部下の作業進捗を常に口頭報告で管理していたのですが、システムに置き換えることで、管理職の工数負担が減りました。

加えて、引き継ぎという視点でも、「見ればある程度わかる」という状態を作る基盤ができました。

3つ目のベネフィットは、全社で業務改善の第一歩を踏み出し、社内情報を共有、蓄積していくことが、中野建設の将来資産につながる。その成功体験を共有できたことでしょう。

実行支援としてワクフリも加わり、現場の意見を聞きながらトライアンドエラーで取り組み、システムでできること、できないこと、運用でカバーすべきポイントなど、システムに対する、中野建設社内の理解を深めながら進めることができました。

また、現状の業務フローを理解したことで、なるべく元々ある運用にシステムの仕様を寄せることとなり、運用開始時の理解不足などを起きにくくする工夫が施されました。

一方、課題も残されました。あくまで現状は、システムに慣れ始めている段階です。操作に慣れる中でリテラシーがさらに上がり、新たな課題やより良い活用方法などが、今後見えてくるのではないでしょうか。

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